福島市の玄関口である福島駅。その東口には、構造上の課題がありました。それは「有人の観光案内所が存在しない」という事実です。
外国人観光客の姿が日に日に増えていく中、現場の危機感は募っていました。「道案内をしてほしい」「おすすめの場所を知りたい」。そんな旅行者のニーズに対し、人が常駐して対応できる場所がないのです。さらに、観光客の到着時間は日中だけとは限りません。早朝や夜間を含め、時間に縛られずに情報提供できる仕組み作りは待ったなしの状況でした。
「無人であっても、安心して利用できる案内機能が必要だ」。これが、プロジェクトの出発点でした。
解決策を模索する中で、担当者が注目したのがAI案内システム「AIさくらさん」でした。世の中にDXツールは溢れていますが、公共性の高い駅での導入において失敗は許されません。選定の決め手となったのは、カタログ上のスペックではなく、確かな「足跡」でした。
担当者はインタビューでこう語ります。「他自治体での導入実績や、補助金活用事例の多い点に注目しました」。すでに多くの自治体で稼働し、現場の課題を解決している実績。そして、導入のハードルを下げる補助金活用のノウハウ。これらが、新しい技術導入への不安を払拭し、一歩を踏み出すための強力な後押しとなったのです。
導入が決まった後も、単に機械を置くだけでは終わりません。「福島らしいおもてなし」をどう表現するか、現場の試行錯誤が始まりました。
通常、多言語対応といえば英語や中国語が一般的です。しかし、福島市は来訪者の傾向データを踏まえ、「タイ語」への対応も視野に入れています。固定概念にとらわれず、実際に来てくれるお客様（データ）に向き合うことで、本当に必要とされる案内を実現しようとしています。
AI特有の無機質さを消すための工夫も進められています。AIさくらさんの制服カラーを福島らしい色合いに調整したり、市の公式キャラクター「ももりん」を画面上に登場させたり。「既存のデザインをただ使うのではなく、工夫したい」。そこには、AIというデジタルな存在を、地域の仲間に加えようとする担当者の温かい視点があります。
このプロジェクトのゴールは、AIを導入することではありません。「福島駅を訪れる方々が、言葉の壁を感じずに観光を楽しめるような環境をつくること」。それが担当者の見据える未来です。
有人窓口がないというマイナスからのスタートでしたが、AIさくらさんというパートナーを得て、福島駅東口は「24時間いつでも多言語で聞ける安心」という新たな価値を手に入れようとしています。利便性を高めながら、利用者のニーズを丁寧に拾い上げ、進化を続ける福島市の挑戦はまだ始まったばかりです。
A: 機能の多さよりも、「現場の課題（人手不足、多言語対応など）」に即しているか、そして「継続的に運用できる実績があるか」が重要です。福島市の事例でも、他自治体での実績が安心材料となりました。
A: 可能です。福島市のように、地域の需要（タイ語など）に合わせた言語追加や、公式キャラクターとのコラボレーションを通じて、地域色を出した運用が行われています。
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AIさくらさん（澁谷さくら）
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