AIさくらさんの対談シリーズ 未来ののびしろ
AIさくらさんの対談シリーズ 未来ののびしろ
CASE 03 AI×メンタルヘルス

心のケアに、テクノロジーを。
〜AIだから、人によりそえる〜

AIと人間——減らすのは「仕事」ではなく「負担」
AI・Web制作会社 ティファナ・ドットコム AIさくらさん
株式会社ティファナ・ドットコム
横山洋太

株式会社ティファナ・ドットコムAI事業部責任者および取締役。エンジニアとしてキャリアを重ね2017年に取締役就任。ウェブ制作から事業を展開した同社は、昨今の社会問題の解決のためにAI(人工知能)のテクノロジーに着目。対面のインターフェイス「AIさくらさん」などを軸として新たなソリューションの提供をめざしている。

東京工業大学理学院物理学系助教 山崎詩朗氏
メンタルドクター
Sidow 氏

精神科専門医×YouTuber。精神科専門医。医学博士。精神科医として働くなかで、世間の精神疾患に対する偏見や誤解の解消、精神科への早期受診の必要性を実感し、SNSで精神科の情報発信を始める。馴染みやすさと分かりやすさを重視した精神科に関する発信が、精神疾患のある人にとどまらず話題となり、YouTubeやTwitterなど自身が運営するSNSの総フォロワーは10万人を超え、さらに人気急上昇中。YouTubeが注目する次世代のクリエイター「YouTube Next Up 2019」の日本代表にも選出される。著書に『「しんどいこと」をリセットする方法』『疲れた心をスーッとほぐす方法』など。

01

AIと人間——減らすのは「仕事」ではなく「負担」

横山洋太(以降、横山)

はじめまして。私横山は、このAIさくらさんを中心とするプロジェクトの責任者をしています。本日は、どうぞよろしくお願いします。Sidowさんは精神科医のお仕事にくわえて、SNSでも積極的に情報を発信されていますね。

メンタルドクターSidow(以降、Sidow)

こちらこそ、どうぞよろしくお願いします。おっしゃるように、精神科に関することをわかりやすく伝えたいなと思って、YouTubeやTwitterなどで発信しています。

横山

さっそくですが、SidowさんはAIについてどんなイメージをおもちですか?

Sidow

自分が医者になった10年前、AIはちょうどブームになるかどうかくらいで、人間の仕事が奪われるのではといわれた時期だったと思います。私は一定のガイドラインにのっとった仕事はともかく、人の心のパーソナルな部分は対応できないだろうと思っていました。

でも最近では、奪う、奪われるではなく、人の負担を減らして協力する体制ができるという文脈でとらえられているんじゃないでしょうか。AIと一緒になって、仕事に集中できる環境を作っていければ良いなと思います。

横山

仕事を奪う、というのはメディアが煽っている部分がありますね。そうじゃないよ、ということを発信していくのが大変で、Sidowさんのようなとらえ方をされる人は、まだ少数派かもしれません。

Sidow

そうかもしれませんね。このAIさくらさんは、どんなことができるのですか?

横山:

主な業務は企業のヘルプデスクで、駅や受付カウンターでの接客対応などが多いです。労働人口が少なくなっている昨今、その人たちの負担を減らせないかというのが元々のコンセプトで、現在多数の企業で導入していただいています。

Sidow

特長というか、どんなところがユニークなんですか?

横山

まずキャラクター性があることでしょうか。皆さん、最初はAIをどう使えばいいかイメージしにくかったそうですが、キャラクターがあるとわかりやすいようです。

Sidow

なるほど。日本人は擬人化すると馴染みやすいのかもしれませんね。

物理学からコマ、SF映画——科学の楽しさを多くの人に伝えたい物理学からコマ、SF映画——科学の楽しさを多くの人に伝えたい
02

精神科医としての期待——負荷を軽減してくれるパートナーとして

横山

先ほど「一緒になって」とおっしゃいましたが、AIにどんなことを期待されますか?

Sidow

自分が精神科医になって思ったんですが、パーソナルな部分にもふれるので、治療者にも負担がかかるんですよ。看護師さんだったり心理士さんだったり、精神科医もそうですけど一定の割合で、病んでしまう人もいます。負荷を下げるという意味で、サポートとしてAIを使えれば、精神が削られなくてすむかなと。

だから、精神科の仕事にAIを導入することには興味があります。さくらさんは、メンタルヘルスに関する問題にも対応しているのですか?

横山

能力としてはあります。仕事の辛さや不眠で悩む人と所定のやりとりをすることで、状況が正常なのか、あるいは精神的疾患の疑いがあるのかを判断するという流れです。

Sidow

メンタル的に不調の人を察知、判断するということですか?

横山

はい。そのうえで産業医に連絡したり、軽度であれば、ある程度のアドバイスをするようになっています。

Sidow

産業医がやることを、ちょっと早めにやる感じですね。産業医がいても相談にいたらなかったり、ストレスチェックを低めに見積もってしまうこともあるので、素直に相談できるメリットがあるかもしれませんね。

横山

そうですね、なるべく気軽にやってもらえる環境が大事かなと思っています。特に若い世代だと、なかなか面と向かって本音を言えないとかありますし。

Sidow

これ、いろいろな企業が導入してくれるといいですね。精神科医としては、相手が1人であっても話を聞くときは多くのリソースを割かなくてはいけないんですよ。さくらさんは、まず話を聞いてもらいたい、あるいは相手は人じゃない方が安心、みたいな人にも良いと思うのですが、そういうことは可能なんでしょうか?

横山

やろうと思えばできますね。大多数の人に対しても同じように対応できるので、AIならではの可能性を感じています。

Sidow

そうすると精神科医も負担が減らせるので、人間にしかできない仕事や本来必要な業務に集中したりできるので、とても良いと思います。

さまざまな技術を、コミュニケーションのためにさまざまな技術を、コミュニケーションのために
03

Sidowさんも体験——「AIさくらさん、やってみた」

PC上のインターフェイスで、SidowさんがAIさくらさんの能力を実体験。メンタルヘルスに関する質問に対してご回答いただきました。
Sidow

では試しにやってみましょう。質問の設定は、かなり細かくできていますね。えーっと残業時間ですが、ここはあえてエグい例を入れてみましょうか、たとえば月100時間以上とか……(判定の表示を見て)おっ、鬱病の可能性が表示されました。正しい診断は産業医の問診が必要、ストレスの後にうつ状態になっているので職場環境の改善が必要です……ここでのアドバイスはすごく適切ですね。これを一対一でやろうとすると、かなり時間がかかりそうです。

横山

このプロセス自体は、精神科の診断基準に沿って、鬱病の診断がつくかどうか分かるように作りこんでいます。

Sidow

不安障害とかアルコール依存症など、他の症状ももらさず聞けるのもAIの強みですね。これなら自分の仕事も短縮できそうです。病院にもあるといいですね。

横山

将来的には導入していきたいですね。簡単な問診をして、その結果どうするかを精神科医の方にお願いできればと思っています。

後編につづく
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