



おそらく今この記事を読んでいる間も、代表番号には「予約変更」「待ち時間への不満」「説明が分かりにくい」といった電話が入り続けているはずです。中には、声を荒らげたり、同じ内容を何度も繰り返したり、個人攻撃に近い言葉を投げてくる人もいるはずです。
問題は二つあります。
一つ目は、電話とクレーム対応に人手を取られ、本来やるべき調剤・診察準備・事務処理が後ろ倒しになっていること。
二つ目は、繰り返されるカスタマーハラスメントが、受付や看護師のメンタルを確実に削っていることです。
千葉県八千代市の浜野胃腸科外科医院では、診療時間や検査、内視鏡検査の説明や予約の問い合わせをAIが一次対応することで、医療スタッフが診療に集中しやすい体制づくりを進めています。
同じように、滋賀県長浜市役所ではAIによる電話一次対応で、3か月間の問い合わせ186件のうち約84%をAIが明確回答し、人が出る電話を大きく減らしたというデータも出ています。
医療機関向けのカスタマーハラスメント対策でも、本質は同じです。
「すべての電話をAIに任せる」のではなく、「まずは一発目の受け皿をAIに置く」ことで、人が直接浴びる攻撃の回数と強度を下げる、という発想が現実的です。
ここでいうAIは、単なる自動音声ではなく、会話の内容をある程度理解できる仕組みです。
イメージとしては、次のような役割を任せていきます。
まず、電話をかけてきた人の要件を整理します。
予約変更、キャンセル、薬の問い合わせ、検査結果の確認など、よくある用件はAIが聞き取り、クリニック側のルールに沿って案内します。ここまでは通常の電話自動応答と同じですが、AIの場合は「言い方が多少違っても理解できる」点が決定的に違います。
次に重要なのが「線引き」です。
明らかな理不尽な要求や、個人攻撃に近い言葉が続いた場合、AI側で「カスハラ疑い」としてフラグを立てる設計にします。
具体的には、一定時間以上の罵倒や、脅しに近い表現が検出された時点で、通話内容を管理者に通知したり、あらかじめ決めた注意メッセージを出したり、人への取り次ぎを止めるなどのルールを組み込みます。
この「一次受け」と「線引き」をAIに任せることで、スタッフがいきなり矢面に立つ回数を減らし、精神的なダメージを軽くすることが狙いです。
浜野胃腸科外科医院では、診療時間や検査、内視鏡の案内、予約に関する問い合わせの一次受けをAIが担う構成で運用されています。
患者は代表番号に電話をかけると、AIがまず用件を聞き取ります。診療時間やアクセスなどの定型的な問い合わせは、その場でAIが返答し、予約希望については必要な情報だけ収集してから人に引き継ぐイメージです。
同様に、自治体の例ではありますが、茨城県潮来市役所ではAIによる電話一次対応を入れたことで、約530件の電話のうち91.1%をAIが自動回答し、電話対応負担を約70%削減しています。
このような「一次受けのAI化」は、医療機関でもそのまま応用できます。
医療系カスタマーハラスメントに絞るなら、次のような設計が現実的です。
まず、代表電話にかかってきた電話は、原則AIが受けます。
内容が「予約」「時間」「場所」「持ち物」のような定型的なものなら、そのままAIで完結させます。
「診療内容へのクレーム」「担当者を名指しした不満」「賠償要求に近い相談」など、事務レベルを超える内容は、あらかじめ定めたルールに従って、担当者や管理職にだけ転送します。
このとき、AIが自動で通話の要点と温度感をテキスト化して残しておけば、局長や院長が後から内容を確認し、「どのタイミングで誰が出るべきだったか」「現場を守るルールは適切か」を検証しやすくなります。
カスタマーハラスメントで本当に削られているのは、スタッフの心です。
電話を切った瞬間は普通に戻ったように見えても、何度も続くと「またあの人からかかってくるのではないか」「ミスをしたら責められるのではないか」という不安が蓄積します。
教育現場では、愛媛県教育委員会が教職員向けのメンタル相談窓口として、匿名チャット形式のAI相談サービスを導入し、半年で延べ1,800件の相談に対応している例があります。
「職員が、上司や同僚には言いにくい悩みを、まずAIに打ち明ける」受け皿として機能しているケースです。
医療機関でも、考え方は同じです。
電話対応やクレーム対応のログと組み合わせて、「どのスタッフが、どの時間帯に、どのようなきつい言葉にさらされているか」を見える化し、一定ラインを超えたら面談を設定したり、シフトや配置を調整したりする判断材料にできます。
AI自体がカウンセラーになるわけではありません。
ポイントは、
誰が、どれくらい心理的負荷の高い電話を担当しているか
どのような言葉が繰り返されているか
を、感覚ではなくデータで押さえ、人の支援につなげることです。
こうしたAI活用を検討するとき、現実的に押さえておいた方がよいポイントは三つあります。
一つ目は「どこまでAIに任せ、どこから人が出るか」を最初に決めておくことです。
全件AI対応を目指す必要はありません。むしろ、予約変更や診療時間の案内など、本当にパターン化できるところだけをAIに寄せて、難しい説明や感情の強いクレームは、人が出る前提で線を引いておいた方が安全です。
二つ目は「録音とログの扱い」です。
カスハラ対策として通話を録音し、AIで分析するなら、個人情報やプライバシーの扱いについて院内ルールを作ることが前提になります。誰がどこまで見られるか、どのくらいの期間保存するか、患者への掲示はどうするか、といった基本設計を先に決めておかないと、後から揉める原因になります。
三つ目は「小さく始めて、すぐ検証する」ことです。
最初から全科・全時間帯に広げるのではなく、例えば「平日の午前中だけ」「検査予約だけ」のように、負荷が高い一部分から始め、電話本数とスタッフの感覚がどう変わったかを数字と声で確認します。
自治体の例でも、長浜市役所や潮来市役所は、限られた範囲の電話業務からAI導入を始め、回答率や削減時間を検証しながら展開しています。
カスタマーハラスメントは、放置すれば確実に人を辞めさせます。
一人辞めるたびに、採用コストと育成コストがかかり、残ったスタッフの負担はさらに増えます。これは完全に経営課題です。
AIを使った電話の一次受けやログの見える化、メンタルのサポートは、「スタッフを守るための投資」として考えるべき領域です。
千葉県八千代市の浜野胃腸科外科医院のように、電話問い合わせをAIで一次対応することで、医療スタッフが専門的な業務に集中しやすい環境をつくる動きは、今後さらに広がっていくはずです。
自院で検討する際は、
一番つらい時間帯の電話をどこまでAIの一次受けに寄せるか
どこから人が出るか、その線をどう決めるか
溜まったログを、スタッフのケアと業務改善にどうつなげるか
この三点を、局長・院長・現場リーダーで一度きちんと議論することが出発点になります。
AIさくらさん(澁谷さくら)
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