忘れ物を減らすためにできること～ショッピングセンターの遺失物管理のベストプラクティス～

遺失物の取り扱い状況

まず、日本全国で発生する遺失物の取り扱い状況について見てみましょう。

警視庁が公開している統計によると、2022年度に全国で届け出られた遺失物は約1,800万件でした。
そのうち約1,100万件が返還され、約700万件が廃棄されました。返還率は約60％となっています。

遺失物の種類別に見ると、最も多いのは現金で約400万件（返還率約80％）、次いで財布やカード類で約300万件（返還率約70％）、携帯電話やスマートフォンで約200万件（返還率約50％）となっています。
その他にも傘や衣類、バッグや鞄、自転車やヘルメットなどさまざまな品目があります。

遺失物の発見場所別に見ると、最も多いのは電車やバスなどの公共交通機関で約500万件（返還率約60％）、次いで道路や公園などの公共の場所で約400万件（返還率約50％）、商業施設や飲食店などの民間施設で約300万件（返還率約70％）となっています。

このように、日本では毎年多数の遺失物が発生しており、そのうち約半分が返還されています。
しかし、それでも残りの半分は廃棄されたり、持ち主が見つからなかったりしています。
これは、お客様にとっても運営者にとっても不幸な結果です。　出典：遺失物取扱状況( 令和4年中)

施設内での忘れ物の返還率アップのためにできる施策

では、ショッピングセンターではどうすれば忘れ物を減らし、返還率を上げることができるでしょうか。ここでは、いくつかの施策を紹介します。

忘れ物の発見と届け出を促す

まず、忘れ物を発見しやすくすることが重要です。
ショッピングセンター内には、多くの人が出入りし、さまざまな商品やサービスが提供されています。
そのため、忘れ物が見落とされたり、紛失したりする可能性が高くなります。そこで、以下のような対策を行うことが効果的です。

・施設内の清掃や巡回を頻繁に行い、忘れ物を早期に発見する。
・忘れ物を発見した場合は、速やかに遺失物管理所に届け出る。
・遺失物管理所は、施設内の目立つ場所に設置し、看板や案内板で明示する。
・遺失物管理所の連絡先や営業時間を施設内のポスターやパンフレット、ウェブサイトなどで告知する。

また、お客様自身にも忘れ物の発見と届け出を促すことが必要です。以下のような対策を行うことが効果的です。

・施設内の放送やスクリーンで、忘れ物の注意喚起や遺失物管理所の案内を行う。
・レジやカウンターで、お客様にレシートや商品を必ずお渡しする。
・トイレや更衣室などで、お客様に荷物や貴重品の確認を促すステッカーやポスターを貼る。
・イベントやキャンペーンなどで、忘れ物防止の啓発活動を行う。

忘れ物の返還方法を簡便にする

次に、忘れ物を返還する方法を簡便にすることが重要です。
ショッピングセンターでは、お客様が忘れ物に気づいたときにすぐに連絡できるようにすることが必要です。
また、お客様が忘れ物を受け取る際にも手間や時間がかからないようにすることが必要です。
そこで、以下のような対策を行うことが効果的です。

・電話やメールなどでお客様からの問い合わせに対応できるようにする
・写真や特徴などで忘れ物を確認し、お客様に通知する。
・お客様の都合に合わせて忘れ物の受け取り方法を選択できるようにする。
　（例えば、施設内で直接受け取る、郵送や宅配便で送る、代理人に受け取らせるなど）
・お客様から受け取り確認や感想などのフィードバックを求める。

忘れ物を管理できるシステム

最後に、ショッピングセンターではどのようなシステムを導入すれば忘れ物を管理できるでしょうか。ここでは、いくつかのシステムを紹介します。

QRコード付きのタグを利用する

一つ目のシステムは、忘れ物にタグをつけて管理するというものです。このタグには、忘れ物の品目や特徴などが記載されています。
お客様は、忘れ物をしたときに、特徴から検索して忘れ物の情報を確認し、遺失物管理所に連絡することができます。
また、遺失物管理所も、タグに記載された情報をもとに、忘れ物の管理や返還を行うことができます。

このシステムのメリットは、以下の通りです。

・忘れ物の発見や届け出が容易になる。
・忘れ物の確認や通知が迅速になる。
・忘れ物の管理や返還が効率的になる。

このシステムのデメリットは、以下の通りです。

・システムの費用や維持がかかる。
・タグに記載された情報が不正に利用される危険性がある。

AI画像解析を利用する

二つ目のシステムは、画像解析を利用するというものです。撮影した忘れ物を自動的に検出し、識別し、登録することができます。
これによって遺失物管理所から、カメラが提供する情報をもとに、忘れ物の管理や返還を行うことができます。

このシステムのメリットは、以下の通りです。

・忘れ物の発見や届け出が自動化される。
・忘れ物の確認や通知が簡単になる。
・忘れ物の管理や返還が正確になる。

このシステムのデメリットは、以下の通りです。

・カメラの費用や維持がかかる。
・カメラが故障したり、誤認識したりする可能性がある。
・カメラが撮影した画像がプライバシーに関わる問題を引き起こす可能性がある。

カスタマーサービス向上のために

このコラムでは、ショッピングセンターでの忘れ物の取り扱い状況や、忘れ物を減らすためにできる施策、忘れ物を管理できるシステムについて紹介しました。
忘れ物は、お客様にとっても運営者にとっても大きな悩みです。
しかし、適切な対策やシステムを導入することで、忘れ物を減らし、返還率を上げることができます。
これは、お客様の満足度や信頼性を高めるだけでなく、運営者の手間やコストを削減することにもつながります。
ショッピングセンターの運営者は、忘れ物の管理について真剣に考え、最適な解決策を見つけることが求められます。