ホテル・商業・温浴施設…「縦割り管理」の壁を壊せ。複合施設ならではの落とし物DX

「どこで落としたか分からない」お客様を迷子にさせないために

複合施設の最大の強みは、宿泊、買い物、癒やしを一箇所で楽しめる「回遊性」にあります。
しかし、それは裏を返せば「どこで物を落としたか特定しにくい」というリスクでもあります。

お客様からすれば、ホテルもモールもスパも、すべて「同じ施設」です。
しかし、バックヤードでは「ホテル事業部」「商業事業部」「温浴事業部」と管轄が分かれていることが一般的。
 問い合わせを受けたホテルのフロントスタッフが、隣接する商業施設の落とし物情報を把握していない――この「情報の断絶」こそが、複合施設が抱える構造的な課題でした。 
お客様を各窓口へたらい回しにすることは、施設全体のブランド体験を損なう要因になりかねません。

施設ごとにバラバラだった管理。アナログ連携の限界

今回インタビューを行った企業様も、まさにこの課題に直面していました。
ホテルをメインに、商業施設や温浴施設などを含む複合施設を運営されていますが、「これまでは落とし物の管理は施設ごとに異なり、統一されたシステムがありませんでした」と振り返ります。

各施設がそれぞれの台帳やフローで管理していたため、「情報の共有に時間がかかり、問い合わせ対応にも手間がかかっていた」のが実情です。
 「ホテルにはないが、スパにあるかもしれない」という時、わざわざスパの事務所へ電話をして、紙の台帳を確認してもらう。このアナログな連携では、リアルタイムな回答は不可能です。施設規模が大きく、業態が多岐にわたるほど、この「確認コスト」は経営の隠れた重荷となっていました。

複合施設での実績が証明する、大規模運用の安定性

導入の大きな後押しとなったのは、同じく大規模複合施設である系列の「有明ガーデン」での採用実績でした。

単一の店舗とは異なり、複合施設では膨大な数の落とし物が発生し、複数の拠点で同時に情報が登録・検索されます。 この複雑な運用に耐えうるシステムであるかどうかが選定の鍵でした。
結果として、「AIさくらさんは非常に有用だと感じている」との評価を得ており、実績に裏打ちされたシステムが、複雑な施設間の情報共有をスムーズにつなぐハブとしての役割を果たしています。

点から面へ。エリア全体で「落とし物」をカバーする未来

システムを導入したことで、ゴールが見えてきました。
担当者様は今後の展望として、「ホテル以外の商業施設や温浴施設とも情報を円滑に共有し、落とし物管理の効率を向上させることを目指しています」と語っています。

これは、施設ごとの「点」の管理から、エリア全体の「面」の管理への進化を意味します。
ホテルのフロント端末で、温浴施設の落とし物情報も即座に照会できる。

そんな体制が整えば、「あちらのスパでお預かりしているようです」と、その場でスマートな案内が可能になります。 AIさくらさんによる情報の一元化は、複合施設の「縦割りの壁」を取り払い、お客様に「どこにいても守られている」という安心感を提供するインフラへと進化していくのです。