粕屋町役場に学ぶ自治体DX｜月200件の問い合わせをAIで自動化し、職員の工数を削減した秘策

窓口業務の逼迫とDXへの挑戦：粕屋町が抱えていた「現場のリアルな課題」

自治体窓口には、毎日膨大な数の「どこで手続きすればいいか」「何が必要か」といった基礎的な問い合わせが寄せられます。
粕屋町役場でも、町全体でDXを推進するという大きな目標を掲げつつも、現場では日々繰り返されるルーチンワーク的な案内業務が職員の負担となっている現状がありました。
特に、引っ越しシーズンなどの繁忙期には窓口が混雑し、一人ひとりの住民に対して丁寧なフォローを行いたくても、物理的な「時間」が足りないというジレンマを抱えていたのです。
こうした「基本的な質問への対応に忙殺され、専門性の高い業務に時間を割けない」という課題を解決するために、町はAIの導入へと踏み切りました。

なぜ「AIさくらさん」だったのか？選定理由と導入による変化

粕屋町がAIさくらさんの採用を決定した最大の理由は、すでに複数の自治体で稼働しているという圧倒的な「導入実績」にありました。
不特定多数の住民が利用する役場において、システムの安定性と信頼性は不可欠です。導入後は、AIサイネージが庁舎ロビーで「コンシェルジュ」として機能し、月間100件から200件の問い合わせを完結させています。
これにより、職員が対応していた基礎的な案内業務の一部が自動化されました。

定量的効果だけではない「親しみやすさ」がもたらす新しい役場の形

AIさくらさんの導入効果は、業務効率化という数字面だけではありません。粕屋町の担当者が「人と話すよりも、AIでの案内の方が気が楽という方も中にはいらっしゃる」と語るように、デジタルならではの気軽さが住民の利便性を高めています。また、AIさくらさんはその愛らしいビジュアルから「マスコットのような存在」として親しまれており、お子さんが雑談を交わすなど、役場のロビーを明るく彩る役割も果たしています。「ニコニコしていて、庁舎を明るくしてくれる」という声にある通り、DXは冷たい機械化ではなく、住民と役場の距離を縮める温かなツールとしても機能しているのです。

今後の展望：手続き案内の「視覚化」でさらなる利便性向上へ

今後は、単なる場所案内にとどまらず、より複雑な「手続きの案内」を強化していく方針です。具体的には、引っ越しや各種証明書発行の際に、AIさくらさんがフローチャート形式で手順を示したり、必要な持ち物を画面に表示したりすることで、住民が迷わずに手続きを完結できる仕組みを目指しています。資料の書き方などの視覚的な情報提供をAIさくらさんと一緒に行うことで、窓口での「書類不備」による手戻りを減らし、さらなる住民満足度の向上と職員の負担軽減を追求していく予定です。