我々鉄鋼メーカーの熱延工場では、安全を守るためにさまざまな対策を行っております。
そのための手順、手続きを踏むだけでかなり時間を要すのですが、事故が起きてしまったら損害は莫大、なによりも大勢の命に関わるような事態になるため、安全性には細心の注意を払う必要があります。
その安全対策を取っていてさえ事故は起きるもので、幸い致命的なものは起きていませんが、あわやという場面は何度か経験しました。
まさに自分の命にも関わることなので、もっと安全にできないかと取り組んだのがAIによる事故予測です。
熱延工場では危険な場所に生身の人間が直接入って作業するような事がないよう、工場の設計思想そのものから安全対策がなされているのですが、その上でも命を落とすような事故が例年起きています。
有機溶剤の扱いや有害なガスの発生、クレーンなどの巨大な機械の操作など、気をつけなければならない点がたくさんあるわけです。
機械は故障や誤動作を起こしますし、介在する人間のミスもあります。
例え誤動作やミスがあったとしても安全性を確保出来るよう、さまざまなセンサーが設置されており、異常を察知すると即座に警報発報、機械が止まる、というような仕組みになっています。
ただ、異常が発生してからでは遅い場面もあり、それが事故に繋がるのです。
そこで何をしたかというと、異常の種類、発生数、パターン、異常が発生する際の各センサーの数値、介在している人間のステータス(連続労働時間、休憩の有無、連続勤務日数、作業の習熟土等)をできるだけ細かくデータに取り、それをAIに学習させたのです。
それによって、事故が起きる確率をAIで予測することができました。
一定のしきい値を儲け、AIで予測した事故確率がしきい値を超えると作業に見直しが入るようにしたのです。
すると小さなものも含め事故発生数はAI導入前の62%に削減されました。
また警報が鳴る回数も3分の1にまで減ったのです。
正直データを取得した期間が充分ではないので、さらにデータが溜まってくれば、この先もっと事故予測の精度を上げられると思っています。
現場に長く居る熟練の方々は危険の察知感度が上がり、事前に事故を防ぐヒーローのような動きをする人もいたと聞きます。
現在、業界の現場は請負業者も含めさまざまな人が出入りする状態となっており、鉄鋼の場合は他の業種と比べるとそれほど人は流動しませんが、ヒーローのような熟練工が少なくなっているのは事実です。
そこに現れた事故予測AI。
これは熟練工と似たような勘の働くヒーローだと私は思います。
明らかに事故が減って、怪我をする工員も少なくなったのですから。
この先も細かなデータを集めて、さらに強いヒーローになるよう、事故予測AIを育てていこうと思います。
澁谷さくら(AIさくらさん)
登録・チューニング作業をお客様が一切することなく利用できる超高性能AI。
運用やメンテナンス作業は完全自動化。問い合わせ回数や時間を問わない無制限サポート、クライアントの業務に合わせた独自カスタマイズで、DX推進を目指す多くの企業が採用。