建設現場の安全を担うAI気象予測サービス　気象条件による事故の発生を予測

建設現場に影響を与える気象条件を予測

建設現場において、気象条件は工程や安全に大きな影響を与えます。雨や風が強いと、コンクリートの品質が低下したり、クレーン作業ができなくなったりすることがあります。
そこで、AI（人工知能）を用いて高精度な気象予測情報を提供するサービスが開発されました。
大阪ガスと大林組が共同で着手したこのサービスは、2025年大阪・関西万博の開催予定地である夢洲エリアで実証実験を行っています。本記事では、このサービスの概要や特徴、実証実験の内容や目的、今後の展望などについて解説します。

サービスの概要と特徴

このサービスの実証実験は、3つの段階で行われます。

第1段階：AI気象予測サービス

大阪ガスが持つ独自の気象予測技術と、夢洲エリアに設置した小型の気象計から得られる現地の気象観測データを学習したAIを組み合わせて、高精度でタイムリーな気象予測情報を提供するものです。

第2段階：建設現場向け気象サービス

建設作業の各工程に応じて必要な気象情報を、個々の建設現場向けに加工して提供するものです。
例えば、クレーン作業では労働安全衛生法によって中止にしなければならない風速条件が定められていますが、一定時間ごとの平均風速予測のデータを「クレーン作業指数」として提供することで、事前に工程変更するかどうかの判断が容易になります。

第3段階：伝達手段の検討

建設現場に適した効果的な情報提供の手段を検討するものです。
例えば、施工管理に関する支援情報は施工管理者が利用するチャットツールに通知し、作業関連の注意案内は朝礼広場のデジタルサイネージで作業員へ周知するなど、目的にあった伝達手段とその効果を検討します。

実証実験の内容と目的

このサービスの実証実験は、2025年大阪・関西万博の開催予定地である夢洲エリアで行われています。
夢洲エリアには、小型の気象計が設置されており、現地の気象情報をリアルタイムに取得できます。これらの情報を基に、AI気象予測サービスで高精度な気象予測を実施します。
実証実験の目的は、サービスの有用性や効果を評価することです。具体的には、実測の現地観測データと予測データとの比較や、利用者へのヒアリングを通じて、予測精度や情報提供のタイミングや方法、伝達手段の効果などを検証します。

今後の展望

このサービスの開発と実証実験は、建設現場におけるAI気象予測の活用の可能性を示すものです。
得られた成果を他の建設現場にも広く展開・活用することで、建設工事の生産性と安全性の向上に貢献していきます。
また、夢洲エリアは、「大阪府・大阪市スーパーシティ構想」に掲げられている「夢洲コンストラクション」や、万博期間中・終了後のさまざまなデータ連携を目指した「夢洲プラットフォーム」の一環として、気象予測の活用についても検討していくようです。

まとめ

本記事では、AI予測を用いた高精度な気象予測情報を建設現場で活用する「建設現場向けAI気象予測サービス」の開発について解説しました。
このサービスは、気象業務法の改正によって可能になった取り組みであり、気象予報士を介さない気象予測結果の提供が今後ますます広がることが期待されます。
建設業界は作業の大部分をアナログに依る部分が大きく、昨今は建設DXとしてさまざまなデジタル化が進められています。
AI技術の活用もまだまだ始まったばかりですが、建設DXとともに今後もさまざまな技術革新が生まれることでしょう。