



クリニックの受付では、多くの場合、少人数のスタッフが来院患者の受付・会計、電話対応、レセプトや各種事務を同時にこなしています。この状況が続くと、次のようなことが起きやすくなります。
・電話が鳴っても誰も出られない時間帯が生まれ、「何度かけてもつながらない」という印象を持たれやすくなります。
・本当は予約の変更や簡単な確認だけだったとしても、患者さんは不安になり、他院への流出リスクが高まります。
・同時に、受付スタッフは常に電話に追われる感覚が強くなり、「誰かがずっと走り続けている」状態から抜け出せなくなります。
人を増やせない前提で、この状態を変えるには、「どの電話を人が受けて、どの電話をAIに任せるか」を切り分けるしかありません。
まずは、実際に医療機関でAIを受付や電話に使っている事例から、どのような使い方をしているのかを見ていきます。
一つ目は、新橋トラストクリニックの事例です。
このクリニックでは、40インチサイネージを使った「AI受付」としてAIを導入し、受付案内や自動応答、定型的な患者対応をAIに任せています。その結果、定型問い合わせの代替によって、年間約200時間の業務削減を見込んでいます。
イメージとしては、「クリニックさくらさん」「受付さくらさん」「アバター接客さくらさん」を組み合わせた構成に近い形です。
二つ目は、小山中央診療所の事例です。
ここでは、案内業務の一部をAIが担うことで、患者案内の流れをスムーズにしつつ、スタッフの働きやすさとの両立を図っています。用途としては、受付案内や診療メニューの説明、予約関連のよくある質問への対応が中心です。
三つ目は、浜野胃腸科外科医院の事例です。
このケースは、まさに医療向けの「AI電話対応」としての構成になっており、診療時間や各種検査、内視鏡検査の説明や予約など、電話問い合わせをAIが一次対応することで、医療スタッフが診療に集中しやすい環境を作っています。
三つの事例に共通しているのは、
「人でなければできない対応」と「毎回ほぼ同じ説明になる対応」を分け、後者を医療AIに任せている点です。
院長先生やスタッフが、
・診察内容の判断
・クレームやデリケートな相談
・その患者さんの背景を知っている人でないと難しい対応
といった、人でなければできないところに集中できるようにしている、ということです。
クリニックより規模の大きい自治体では、すでに電話AIを使った本格的な運用が始まっており、そこで得られている数字は、医療現場にとっても参考になります。
茨城県潮来市役所では、「AI電話対応さくらさん」による電話AIを導入し、市民からの問い合わせ約530件に自動応答しています。その中で回答率は91.1%、電話対応負担は約70%削減という成果が出ています。
愛知県一宮市役所では、市民税・県民税申告会場の予約業務を、AIによる電話対応とオンライン予約で一体的に自動化しました。ピーク時には、1日1,000件以上あった電話をAIでさばき、24時間受付と予約管理までを自動で回しています。
医療機関と自治体では業務内容こそ違いますが、「さばき切れない量の電話」と「限られた人員」という構図は共通しています。これらの事例から読み取れるのは、
・医療以外の領域でも、電話AIはすでに実用レベルで使われている
・1日数百〜1,000件規模の問い合わせでも運用できている
という点です。
クリニック単体では、ここまでの件数になることは少ないかもしれませんが、逆に言えば、「自治体で運用できているレベルのAIであれば、クリニックの電話量には十分対応できる」という見方もできます。
電話対応を自動化する仕組みとして、昔からあるのが「IVR」と呼ばれる自動音声応答です。
「〇番は診療時間のご案内、〇番は予約の変更」といった形で、患者さんに番号を押してもらう方式です。一方で、ここまで見てきた事例は、番号入力ではなく、AIが会話で要件を聞き取るタイプです。
この違いが、医療現場ではかなり大きくなります。IVRの場合は、メニューを増やしたり変えたりするたびに、院内やベンダー側で細かい設定変更が必要になります。ワクチン接種や発熱外来など、一時的な案内を入れたいときも、同じことが起こります。対話型の医療AIであれば、患者さんは「今日は熱があるのですが診てもらえますか」のように、人に話しかけるのと同じ感覚で用件を伝えられます。AI側はその内容を要約し、診療時間や受診ルールなどを返したり、必要に応じてスタッフに引き継いだりすることができます。さらに、どんな問い合わせがどれくらい来ているのかがログとして残るため、受付業務そのものの見直しにも使えます。
自治体の事例では、AIチャットボットが年間10万件の問い合わせを処理し、約5,300時間の業務削減につながったケースもあります。別の自治体では、小規模な役場でもAIチャットボットによって年間約800時間の業務削減が実現しています。
こうした数字は、そのまま医療に当てはめるものではありませんが、「問い合わせ内容をAIが分類し、溜まったデータをもとに案内の改善ができる」という点では、医療AIでも同じ考え方を取ることができます。
ここまでを整理すると、受付や電話まわりに医療AIを入れることで、
次の三つの変化が起きやすくなります。
一つ目は、「受付スタッフの時間の使い方」が変わることです。
新橋トラストクリニックのように、年間約200時間分の定型問い合わせをAIが肩代わりするだけでも、スタッフ一人分の月間勤務時間に近い余裕が生まれます。その時間を、会計やレセプト、来院患者への声かけなど、人でないとできない部分に回せるようになります。
二つ目は、「患者さんの体験」が変わることです。
浜野胃腸科外科医院のように、診療時間や検査に関する問い合わせをAIが一次対応することで、診療に集中している時間帯でも、最低限の案内は止まらずに提供できます。結果として、「電話がまったくつながらない」という印象を持たれるリスクを減らせます。
三つ目は、「院長の意思決定材料」が増えることです。
潮来市や一宮市のように、AIが問い合わせ内容を記録してくれるケースでは、どんなテーマの電話が多いかが数字で見えるようになっています。医療機関でも同じように、予約変更が多いのか、検査前の不安に関する相談が多いのか、といった傾向が分かれば、ホームページや院内掲示の内容、診療体制の見直しなどに生かせます。
いきなり「すべての電話をAIに任せる」のは、現実的ではありません。
クリニックで取りやすいステップは、次のような流れです。最初は、診療時間やアクセス、よくある検査の案内など、内容が決まっていて例外の少ない領域だけをAIに任せます。
そこで溜まったログを見ながら、どの問い合わせが多いのか、どこでAIでは難しいのかを確認していきます。
次の段階として、予約変更やキャンセルなど、ルールがはっきりしているものから少しずつAIの守備範囲を広げていきます。
そのうえで、院長とスタッフで「ここから先は必ず人が出る」「ここまではAIに任せる」という線引きを定期的に見直していく、というやり方が、現場のストレスを増やさずに進めやすいパターンです。
答えとしては、「設計次第で十分対応できます」という言い方が近いと思います。
市営住宅の窓口など、高齢者や身体が不自由な方が多い窓口でも、アバター接客のAIを使って、時間に縛られない相談環境を作っている事例があります。
このように、高齢の方が多い現場でもAIを活用している例があるので、大事なのは「ボタン操作を減らし、ゆっくり話してもらえる設計にすること」です。
必ずしも最初から必須ではありません。
一宮市の事例のように、AI電話と予約システムを組み合わせて、予約受付から管理まで一気通貫で自動化しているケースもありますが、クリニックでは、まずAIが受けた内容を画面やメールでスタッフに渡すところから始め、様子を見ながら連携範囲を広げていく進め方も現実的です。
医療向けに使われているAI電話の事例では、診療時間や検査、内視鏡検査など、ある程度決まったパターンの問い合わせを扱っています。同じように、自院でよく出る診療科名や検査名をあらかじめ登録しておき、導入後にログを見ながら少しずつ言い回しを足していくことで、そのクリニックらしい言葉にも対応しやすくなります。
ここまで見てきたように、医療AIといっても、
最初の一歩は「受付や電話まわり」を楽にするところから始めるのが現実的です。
新橋トラストクリニックのように、AI受付で年間約200時間の業務削減を見込んでいる例もあれば、浜野胃腸科外科医院のように、電話の一次対応をAIに任せて診療に集中しやすくしている例もあります。
自治体では、数百件から数万件規模の問い合わせをAIが処理し、数千時間単位の業務削減につながっている事例も出ています。
もし院長先生が、
・受付スタッフにこれ以上電話の負担をかけたくない
・人を増やさずに、電話対応の「取りこぼし」を減らしたい
・どうせAIを入れるなら、導入後の運用まで一緒に考えてくれるパートナーがほしい
と感じているなら、
まずは「定型的な電話・受付案内を医療AIに預けるところまで」を一つのゴールにして検討してみるのが良いと思います。
医療機関向けのAI電話対応や受付AIを提供している「AIさくらさん」では、ここで紹介したようなクリニックや自治体の事例をもとに、規模や診療内容に合わせた構成を一緒に考えることができます。
自院の状況に近い事例があるかどうかを知るところからでも構わないので、まずは一度、事例集やデモを確認してみてください。
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