「自転車ルール、AIが即答」 複雑化する規制に自治体がチャットボットで対応

増加する自転車関連の問い合わせに対応

近年、環境意識の高まりや健康志向を背景に自転車利用者が増加する中、自転車のルールや交通法規に関する市民からの問い合わせが自治体窓口に集中しています。これに対応するため、全国の自治体ではAIチャットボットを導入し、24時間体制での情報提供サービスを展開し始めています。
とある自治体ではホームページ上にAIチャットボットを設置。利用者は自転車の交通ルールや駐輪場情報、罰則規定など、気になる点をチャット形式で質問できます。担当者によれば「導入から3か月で5,000件以上の問い合わせがあり、特に電動アシスト自転車の規制に関する質問が多い」とのことです。

複雑化する自転車の分類と法規制

自転車に関する問い合わせが増加している背景には、移動手段の多様化と複雑な法規制があります。従来の一般自転車に加え、電動アシスト自転車、ペダル付き電動キックボード、電動バイクなど、分類が曖昧な乗り物が市場に急増しています。
2023年の道路交通法改正では、「特定小型原動機付自転車」という新しい区分が創設され、電動キックボードなどが対象となりました。また、電動アシスト自転車についても、アシスト比率や速度制限の規定が細分化されています。こうした複雑な制度変更に市民が戸惑う場面が増えており、自治体への問い合わせも専門的な内容が増加しています。
これらの対応のためにAIチャットボットを導入した自治体の担当者は「法改正の度に窓口や電話での問い合わせが殺到し、対応に追われていました。チャットボットの導入により、基本的な質問はAIが24時間対応するようになり、職員は複雑な案件に集中できるようになりました」と導入効果を語ります。

事故防止と安全啓発にも活用

AIチャットボットは単なる情報提供だけでなく、安全啓発にも活用されています。新たな取り組みとして自治体では過去の事故データをAIに学習させることで、地域特有の危険箇所や注意点をアドバイスする機能を追加しました。
「特に通学路や商店街など事故が多発するエリアについて、時間帯や天候に応じた注意喚起ができるようになりました」と同市交通安全課の担当者は説明します。また、高齢者向けの電動アシスト自転車の安全な乗り方や、子ども向けの自転車ルール学習コンテンツもチャットボットから提供されています。

課題と今後の展望

一方で、AIチャットボットによる情報提供には課題も残されています。「法改正直後は最新情報への更新が間に合わないことがあり、誤った情報を提供するリスクがある」と専門家は指摘します。また、高齢者など情報弱者がチャットボットを利用できるかという点も課題となっています。
こうした課題に対して自治体では、AIチャットボットと従来の紙媒体やセミナーを組み合わせたハイブリッド型の情報提供を実施。「デジタルとアナログ、双方のアプローチで全ての市民に正確な情報を届けることが重要」と担当者は語ります。
自転車をめぐる法規制や安全ルールは今後も変化していくことが予想されます。その中で、AIチャットボットは自治体と市民をつなぐ新たなコミュニケーションツールとして、その役割を拡大していくことでしょう。