



現場の感覚だけでなく、客観的なデータからも観光案内所が直面している危機的状況が明らかになっています。
観光庁の調査(※1)によると、訪日外国人が旅行中に困ったことの第2位に「施設スタッフとのコミュニケーション(15.2%)」が挙がっています。特に遺失物は、特徴を詳細に伝える必要があります。例えば「使い古された子供のぬいぐるみ」や「現地の薬が入ったポーチ」など、単語帳にはないニュアンスを含んだ物品の紛失が多く、これを多言語で聞き取るには高度な語学力が必要です。結果として、1件の対応に30分以上を要するケースも珍しくありません。
訪日ラボなどのデータによると、インバウンド客の忘れ物第1位は「衣服」、第3位には意外にも「おもちゃ・ぬいぐるみ」がランクインしています。これらはパスポートや財布と違い、本人確認が難しく、特徴も「茶色いクマ」など曖昧になりがちです。アナログな台帳管理では「似たような物品」が大量に並び、照合ミスや取り違えのリスクが極めて高くなっています。
多くの観光案内所を苦しめているのが、保管期限を過ぎた遺失物の警察への移送業務です。ある温浴施設の事例では、手書きでのリスト作成と現物照合、提出書類の作成に毎回2〜3時間を要していました。これが観光シーズンの繁忙期と重なれば、案内所機能が麻痺するのは必然です。
では、システムを導入することで具体的にどのような成果が出るのでしょうか。ここでは「落とし物クラウドfind」や「MAMORIO」といった主要システムの導入事例から、その効果を紐解きます。
ある鉄道会社では、チャットボットとAI検索を組み合わせたシステムを導入しました。旅行者が自分のスマホからLINE等で特徴を入力(または写真登録)するだけで、AIがデータベースと照合します。
導入前: スタッフが電話口で特徴を聞き出し、倉庫へ走って探していた。
導入後: 問い合わせ対応の 80% が自動化。発見後の返却率も 2倍 に向上。
羽田空港などの大規模施設でも導入が進んでいます。従来は各ターミナルからの電話リレーで捜索していましたが、全情報をクラウドで一元化。
効果: 物品登録から検索までのリードタイムが半減。
現場の声: 「画像で即座に確認できるため、『Is this yours?』と画面を見せるだけで完結するようになった」
私が実際にシステムデモを検証して感じた、現場にとって「最もありがたい機能」は以下の3点です。
従来は「赤色、長財布、革製、傷あり…」と文字で台帳に記入していましたが、AIシステムならスマホで撮影するだけです。AIが自動的に「財布」「赤」「レザー」とタグ付けを行います。これにより、日本語が苦手なスタッフでも登録業務が可能になり、属人化が完全に解消されます。
個人的に最も感動したのがこの機能です。システムに登録されたデータを元に、警察署に提出する「遺失物届」の様式に合わせてPDFを自動生成できます。数時間かかっていた転記作業が、わずか数分で完結します。これだけでも導入の価値があると言えるでしょう。
観光案内所が閉まっている夜間でも、旅行者はQRコードからシステムにアクセスし、落とし物の検索や登録ができます。「明日の朝まで待たなくていい」という安心感は、旅行者の不安を大きく軽減し、観光地の評価向上に直結します。
多くのシステムが存在しますが、観光案内所特有のニーズを満たすためには以下の点を確認してください。
画像認識精度: 撮影後、何秒でタグ付けされるか(目安は10秒以内)。
警察連携機能: 地元の警察署の様式に対応した書類出力が可能か。
多言語UI: スタッフ管理画面だけでなく、旅行者用検索画面が多言語対応しているか。
導入コスト: 専用機器が不要で、手持ちのタブレットやスマホで運用できるか。
A: はい。小規模だからこそ、少人数のスタッフが「探し物」に時間を取られるインパクトは甚大です。月額数万円程度から導入できるクラウド型であれば、人件費削減効果ですぐに元が取れるケースが大半です。
A: 「スマホで写真を撮る」という日常的な動作が基本操作となるため、複雑なキーボード入力が必要なExcel管理よりも定着が早い傾向にあります。
A: クラウド型の場合、サーバー構築などが不要なため、申し込みから最短2週間〜1ヶ月程度で運用開始できるサービスが一般的です。
観光案内所における遺失物管理システムは、単なる業務効率化ツールではありません。スタッフを「終わりのない探し物」から解放し、本来の「観光案内」というクリエイティブな仕事に戻すための投資です。
「落とし物をしても、あの街ならすぐに見つかった」。そんな感動体験を提供できる観光地になるために、まずは現状の課題を可視化することから始めましょう。
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