



総務省データが示す労働力不足の中で、横浜市観光協会がいかにして「現場の崩壊」を未然に防いだか。
総務省が発表した「自治体戦略2040構想研究会」の報告書によれば、2040年には自治体職員が現在のおよそ半数近くまで減少するリスクが指摘されています。観光需要が回復する一方で、現場を支える「人」の確保は年々困難になっています。
横浜市観光協会においても、この課題は例外ではありませんでした。特に、以下の2点は現場担当者を悩ませる「解決困難な痛み」でした。
「17時の壁」による機会損失: 人間が配置できる時間は限られており、早朝や夜間の観光客に対応できない。
インバウンド対応の限界:英語だけでなく、中国語・韓国語など多言語対応ができるスタッフを常時確保するコストが高い。
インタビューの中で、担当者は「2027年に控える大型イベント(GREEN×EXPO 2027等)」を見据え、今から体制を整える必要性を強く感じていました。
「導入直後は良くても、長期的にはボロが出るのではないか? 結局、人が対応した方が早いと言われてしまうのではないか?」
当初はこのような不安を抱えながらのスタートでしたが、結果としてこの決断が、後の「完全無人化」への布石となりました。
案内所を「AIさくらさん」へ完全移行したことで、稼働時間は拡大し、運用コストは劇的に圧縮されました。
横浜市観光協会が導入した「AIさくらさん」による効果を、従来の有人対応と比較しました。劇的な変化が見られたのは以下の4点です。
1. 稼働時間の拡大(機会損失ゼロへ)
Before(有人): 10:00 〜 17:00までの限られた対応。
After(AI): 「始発 〜 終電」まで対応可能になり、早朝・深夜のニーズを取り込みました。
2. 対応言語の多角化
Before(有人): 日本語に加え、英語対応はスタッフのスキルに依存していました。
After(AI): 「日・英・中・韓」の4ヶ国語を標準装備。語学専門スタッフの採用コストをカットしました。
3. メンテナンスの負担
Before(有人): 日々のシフト管理や、新人の教育コストが発生していました。
After(AI): 「クラウド遠隔保守」により、現場でのメンテナンスや管理工数を極小化しました。
4. 緊急時の対応品質
Before(有人): スタッフ個人の現場判断に依存していました。
After(AI): サイネージを一斉に「災害モード」へ即時切替でき、均質な避難誘導が可能になりました。
一般的なチャットボットやサイネージの場合、エラー発生時に職員が現地へ駆けつける必要があります。しかし、「AIさくらさん」は、自己修復機能や遠隔操作により、現場職員の手を煩わせない「メンテナンスフリー」に近い運用を実現しています。この技術的優位性が、担当者が最も懸念していた「運用が楽かどうか」という課題をクリアしました。
スタッフ不在でも「案内所」として機能。「AIのみ」で運用している現在のリアルな声を公開します。
導入から一定期間の「人とAIの並走期間」を経て、現在はスタッフのサポートがない「AI単独」での運用が行われています。横浜市観光協会の担当者は、現在の状況についてインタビューで次のように語りました。
「特に大きな問題もなく、現在は当初の予定通りAIさくらさんのみで案内を行っています。利用者の方からも違和感なく使っていただけており、スムーズに移行できたと感じています」
DXにおける最大の成功は、技術が黒子に徹し、利用者が意識せずに使いこなせる状態になることです。駅の券売機や自動改札と同様に、AIサイネージが「あって当たり前のインフラ」として受け入れられたこと。これこそが、本プロジェクトにおける「勝利条件」の達成を意味します。
定量的成果: 稼働時間が「始発〜終電」に拡大し、有人対応では取りこぼしていた早朝・深夜のニーズをカバー。
定性的成果: 「機械操作への拒否反応」などのトラブル報告はゼロ。
当初の目的であった人員削減(守りのDX)は達成され、現在は「多言語案内の充実」という、より質の高いサービス提供(攻めのDX)へとフェーズが移行しています。
A: 担当者の負担はほぼありません。AIさくらさんはクラウド型のため、Q&Aの追加やシステムの更新はリモートで行われます。現場スタッフが複雑なプログラミングやメンテナンスを行う必要はなく、運用負担は最小限です。
A: 平時より迅速な案内が可能です。サイネージ画面を即座に「緊急時モード(避難場所地図や誘導案内)」に切り替える機能が搭載されています。多言語で一斉に避難誘導を行えるため、パニックになりがちな災害時において、有人対応以上の安全性を確保できます。
横浜市観光協会の事例は、AIが単なる「人の代わり」ではなく、時間や言語の壁を超える「機能拡張」であることを証明しました。「人手不足」は今後ますます加速します。今、AIという新たな労働力を受け入れ、育てる決断ができるかどうかが、数年後の地域の活力を左右します。
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