



多くの自治体が導入している従来の自動音声(IVR)と、今回紹介する「AIボイスボット」には決定的な違いがあります。
「〇〇の方は1番を押してください」というプッシュ操作型のIVRは、振り分けには役立ちますが、結局は職員が受電する必要があり、根本的な業務削減には繋がりません。一方、AIボイスボットは「会話の完結(予約完了)」までをシステムが担います。
稟議書作成時の比較検討材料として、両者の違いをポイントごとに整理しました。
・従来型IVR: 「1を押す」などのキーパッド入力が必要です。
・AIボイスボット: 「3月1日の10時」と話しかけるだけの自然な会話で操作できます。
・従来型IVR: 音声ガイダンスの階層が深く、操作に迷って途中で切電されやすい傾向があります。
・AIボイスボット: オペレーターと話す感覚で利用できるため、機械が苦手な方でも完了率が高いのが特徴です。
・従来型IVR: 振り分けのみで、最終的な対応は職員が行うため効果は限定的です。
・AIボイスボット: 予約受付から完了までを自動化するため、削減効果は極めて高くなります。
・従来型IVR: 複雑な日時変更や空き枠の確認は困難です。
・AIボイスボット: システム上の空き枠をリアルタイムで参照し、その場で柔軟に調整可能です。
・従来型IVR: 連携機能は限定的です。
・AIボイスボット: Web予約システムとリアルタイムで同期し、電話とWebのダブルブッキング(重複予約)を防ぎます。
一宮市が成功したのは、単なる振り分けではなく、「職員の代わりにAIが予約を完了させる」仕組みを採用したからです。
一宮市が導入したのは、AI接客システム「AIさくらさん」を活用したハイブリッド予約モデルです。
令和6年度の申告予約において、最もアクセスが集中する初日の実績は以下の通りです。
・AI電話予約(自動音声): 873件
・インターネット予約: 928件
合計: 約1,800件
これら全てを職員が介在することなく、システムだけで完結させました。もしこれを職員が手動で受けていたら、1件3分としても約90時間分の業務量に相当します。これが「ゼロ」になったインパクトは計り知れません。
このシステムの肝は、「スマホが使えない高齢者」を切り捨てない点です。AIが「ご希望の日時はいつですか?」と自然言語で問いかけ、日程調整を行うため、利用者は機械特有の操作ストレスを感じにくく、スムーズに予約が完了します。
自治体DXで最大の障壁となるのが、「スマホが使えない高齢者への対応」です。一宮市の事例が優れているのは、Web予約だけでなく「AI電話」という選択肢を残した点にあります。
まずは費用対効果を試算するための材料を集めます。
・受電数分析: 昨年の繁忙期の着信数、放棄呼(つながらなかった電話)の数を算出します。
・FAQ整理:「場所はどこか」「必要書類は」など、予約以外で頻発する質問を洗い出します。
・予算感の確認: 初期導入費に加え、運用期間(2〜3ヶ月)のランニングコストを見積もります。スポット利用が可能なクラウド型であれば、通年雇用よりもコストを抑えられるケースが大半です。
調達仕様書を作成します。ここで失敗しないための必須要件は以下の通りです。
・API連携: 庁内で利用中の「予約管理システム」とデータ連携ができること。
・音声認識精度: 方言や高齢者の話し言葉に対応できるエンジンであること。
・シナリオ柔軟性: 予約枠が埋まっている場合の代替案提示などができること。
ベンダー決定後、詳細なシナリオを構築します。
・模擬電話テスト: 職員が実際に市民役となり、わざと曖昧な言い方をするなどして、AIの回答精度をチューニングします。
システムが良くても、知られなければ使われません。
・広報誌・封筒: 申告案内ハガキや封筒に「電話予約番号(AI対応)」を大きく記載します。
・高齢者への案内: 「機械が音声で案内しますので、そのままお話しください」と一言添えるだけで、利用者の抵抗感は激減します。
「一宮市だからできた」わけではありません。 現在、多くのAIボイスボットはクラウドサービスとして提供されており、サーバー構築などの大規模な設備投資が不要です。インターネット環境と電話転送の設定さえあれば、人口規模に関わらずどの自治体でもスモールスタートが可能です。
「市民税・県民税申告」の業務負荷は、マンパワーではなくテクノロジーで解決すべき課題です。
来年の繁忙期に向けた第一歩として、まずは「去年の電話件数はどれくらいだったか?」を振り返ってみてください。その数字が、AI導入によるコスト削減効果を証明する最大の武器になります。
具体的な費用感や、実際のAI音声デモを確認したい場合は、ベンダーへの資料請求や導入相談をご活用ください。他自治体の詳細な事例集も、稟議を通すための強力なエビデンスとなるはずです。
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