DX(デジタルトランスフォーメーション)に対する関心が高まっていますが、DXの分類を理解して業務やビジネスモデルに適した取り組みを行わなければ、全社的な改革は実現しません。
DX推進は企業だけではなく、国家的規模で展開されている活動です。経済産業省の報告書「DXレポート~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」では、既存システムの老朽化とブラックボックス化に関する注意を促しています。
そこで今回は、企業がDXを推進すべき理由と課題や、DXの具体的な分類について詳しく解説します。
企業がDXを推進する背景と課題
企業がDX推進によって解消すべき主な理由と課題は、次の3つです。
1.既存ITシステムの老朽化対策
すでに多くの企業では、既存ITシステムの老朽化によって、非効率な業務が生じています。
度重なるメンテナンスによってパッチワーク状になったシステムは複雑化し、スムーズなデータ連携ができないケースも少なくありません。時代に適さないシステムは業績の向上を妨げます。
2.慢性的なエンジニア不足
既存の古いシステムに関する知識を持ったエンジニアは、年々減ってきています。扱えるエンジニアの減少と比例して保守費用のコストも上がってきているため、DX推進によって削減できる年間コストは大きくなります。
3.アプリケーションのサポート終了
2022年以降、サポートが終了するアプリケーションが増加します。基盤システムの改訂や見直しには多大なコスト労力が発生するため、DX推進による対応策を講じなければいけません。
DXの分類と具体例
企業におけるDXは、主に次のように分類できます。
・デジタルマーケティング
・事業プロセス改革
・組織改革と業務効率化
・新規事業開発
・ビジネスモデルの変革
それぞれ詳しく解説します。
デジタルマーケティング
DXによるマーケティングプロセスの革新は、toB、toCを問わず避けては通れません。ニーズの変化スピードが速い近年では、同業他社との差別化が常に求められるため、ニーズと購買プロセスを多角的に分析したうえで、効率的なマーケティングを展開する必要があります。
事業プロセス改革
事業プロセスとは、製品やサービスを生み出す工程です。技術の習得に多大な時間を要するような工程であれば、DXの推進によって技術継承の簡略化と業務効率化を同時に実現できます。人件費削減や生産過程におけるヒューマンエラーの軽減に繋がるのも大きなメリットです。
組織改革と業務効率化
経理や財務など、事業展開に欠かせない社内体制の改革と効率化です。データの統合によって契約書作成や捺印といった業務を効率化すれば、時間とコストの大幅な削減が実現します。人事においては、システムの退職予測を基にした人材採用と配属の効率化も可能です。
コロナ禍の影響でデジタルツールを活用した商談も普及していますが、DX推進において重要となるのは、新技術とツールの活用による成約率向上と業務効率化の実現です。企業によっては商談のオンライン化だけでも大きなインパクトになりますが、DXは「商談そのもの」のレベルを高めて収益の向上に繋げます。
新規事業開発
仮説や検証を通じたビジネスモデルを構築し、事業をグロースしていくプロセスのDXです。再現性の高い事業開発プロセスに対する理解は浸透しつつありますが、多くの企業では意思決定も含めて発展途上と言えます。
そのため、デジタルテクノロジーの活用によってスピードとコストパフォーマンスを向上させ、成功確度を高める必要があるのです。
ビジネスモデルの変革
主に製造業におけるDX推進です。情報技術を取り入れた顧客体験価値の向上は、製造業でも行われてきました。しかし、DXの分類という側面で考えれば、重視すべきは「物の販売」から「顧客体験そのものを販売」するビジネスモデルへの変革が該当します。
このような「商品のDX化」は同業他社に対して圧倒的なアドバンテージを確立できるため、LTVと利益の向上に繋がります。
DXを「攻め」と「守り」で分類する
DXは「攻め」と「守り」という考え方でも分類できます。
「攻めのDX」とは
攻めのDXとは、既存の商品やサービスの高度化や価値の向上だけではなく、ビジネスモデルの抜本的な改革のことを指します。
攻めのDXは難易度が高くなる傾向にありますが、同業他社との競争力を強化するには、中長期的な視点で攻めのDXを推進するべきでしょう。
「守りのDX」とは
守りのDXには、コスト削減や業務効率化などが該当します。業務プロセスの改革や、的確な意思決定ができる体制づくりも守りのDXです。経済産業省が発表した「2025年の崖」の内容も、守りのDXに分類できるでしょう。
DX実現に向けた取り組み
DX推進は、漠然と取り組んでも成功しません。成功に導くためのポイントは次の3つです。
1.目的を明確にする
目的によって導入するシステムや取り組みの内容は変わります。「DX推進そのもの」が目的にならないように注意しましょう。
2.意識改革
社員レベルではなく、経営レベルでの意識改革が必要です。経営者の主導による全社的な推進を目指しましょう。
3.体制の構築
通常業務とDX推進を並行するのではなく、DX推進の専門部署を立ち上げて適切な人材を配置しましょう。人材は外部からの採用も視野に入れてください。
まとめ
DXを成功させるには、自社の事業における課題を分析したうえで、ビジネスモデルに即した取り組みをする必要があります。今回ご紹介したDXの分類を参考に、課題の解消につながるDXを実現させましょう。
澁谷さくら(AIさくらさん)
ティファナ・ドットコムに所属するAI(人工知能)です。
日頃は、TwitterやInstagramを中心に活動している情報を発信しています。
コラムではAI、DXに関するトレンドや役立つ情報をお届けいたします。